モチベーション理論を知り、活用する。
- 今井 秀司
- 4月19日
- 読了時間: 4分
やる気が出ないのは自分のせい?
―― モチベーション理論で「やる気」の正体を見直す。

「やらなければいけないのに、なぜか動けない」
「一時的には頑張れるけど、すぐにやる気が切れてしまう」
「モチベーションに波がありすぎて、自分が嫌になる」
こうした悩みは、誰にとっても身近なものです。
そして多くの人が、「やる気=根性や気合の問題」と考えがちですが、
実は“やる気”にはれっきとした心理学的な仕組みがあります。
今回は、日常や仕事に活かせる代表的なモチベーション理論をいくつか紹介します。
自分の「やる気のパターン」に気づくヒントにしていただければ幸いです。
1.マズローの欲求5段階説
(アブラハム・マズロー)
人間の動機は、段階的に高まっていくという理論です。
1. 生理的欲求(食事・睡眠など)
2. 安全の欲求(生活・仕事の安定)
3. 社会的欲求(仲間・所属)
4. 承認の欲求(認められたい)
5. 自己実現の欲求(なりたい自分になりたい)
たとえば、仕事でのやる気が出ないとき、それはスキルの問題ではなく、
「今の職場で自分が認められていない」と感じている承認欲求レベルの問題かもしれません。
2.ハーズバーグの動機づけ・衛生理論
(フレデリック・ハーズバーグ)
この理論は、「やる気が出る要因」と「やる気を失う要因」は別物であるという考え方です。
・衛生要因(やる気を失わせる:給料、人間関係、労働環境)
・動機づけ要因(やる気を高める:達成感、承認、責任、成長)
例えば、給料が悪いとやる気を失うけれど、給料が高いからといってやる気が出続けるわけではない。
本当にモチベーションを高めるのは、「意味ある仕事をしている」「自分が成長できている」といった内面的要因なのです。
3.デシとライアンの自己決定理論
(エドワード・デシ/リチャード・ライアン)
この理論では、モチベーションには「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」があるとされます。
・外発的動機づけ:報酬や評価によって動く。
・内発的動機づけ:興味や価値によって動く。
自己決定理論によれば、人は以下の3つが満たされると内発的動機づけが高まりやすくなります。
1. 自律性(自分で選んでいる)
2. 有能感(自分にはできるという感覚)
3. 関係性(誰かとつながっているという感覚)
仕事を自分で選び、得意を活かし、仲間と協力できているとき、人は自然とやる気に満ちていくのです。
4.アトキンソンの達成動機理論
(ジョン・アトキンソン)
この理論は、「成功したい」という気持ちと、「失敗を恐れる気持ち」のせめぎ合いで行動が決まると説明します。
・成功への期待が高く、達成できそうだと感じると、人は行動する。
・失敗への不安が強いと、避ける・先延ばす・やらないという行動に出る。
たとえば、難しすぎる目標や、ミスを厳しく責められる職場では、やる気ではなく「逃げの行動」が増えてしまうのです。
5.ヴィクトール・フルームの期待理論
(ヴィクトール・フルーム)
やる気は「努力する意味がある」と感じられるときに高まる、という理論です。
モチベーション =
(努力すれば成果が出ると信じられる)× (成果が報酬につながると感じられる)×
(その報酬に価値があると思える)
たとえば、どれだけ頑張っても評価されない環境や、評価されても自分の望む報酬につながらない状況では、モチベーションは自然と下がっていきます。
モチベーションは「見直せる構造」である。
これらの理論に共通するのは、
やる気とは「意志の強さ」だけで決まるものではなく、
自分の環境や認知、目標設定によって変動する“構造的な力”だということです。
モチベーションが下がったときは、「なぜ頑張れないのか?」ではなく、
「自分にとって今、何が足りていないのか?」と見直してみることが大切です。
それは、報酬かもしれないし、裁量かもしれないし、承認かもしれません。
モチベーションに波があるのは当たり前です。
大切なのは、「波をどう整えるか」という視点を持つこと。
理論を知ることで、自分のやる気の構造を客観的に見直せるようになります。
自分のモチベーションがどこから来ていて、何によって崩れやすいのか。
そこに気づくことで、やる気は「上げるもの」から「整えるもの」へと変わっていきます。
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